Ghost like girlfriend

TestifyColumn

2018.8.30.PM18:30

実家から送られてきた荷物の中にTシャツがあった。
洗濯してくれたから、実家の匂いが染み付いていた。

自宅のベッドの枕元に小さな骨壷を置いている。
4年前に亡くなった、自分にだけ唯一懐いてくれていたバニラという猫のそれを手にとって、Tシャツに包んで抱きしめた。
骨をもらってから、帰省や贈り物が届く度にいつもそうしている。

意味があるかと言われれば、俺がそうしたいだけとしか言えない。
とは言いつつ、心のどこかで「喜んでくれてたら良いな」とか良さげな反応を待っている自分もいる。
無償だからと優しさを乱暴に押し付けがちな自分に情けなくなりながらも、毎回そうやって抱きしめている。
奴が何を思うかの確かめようはないけど、どこかで元気に過ごしてくれていたら嬉しい。

8月が終わる。
中高の頃はそれに対して心底から残念がったり寂しくなったりしていたはずなんだけど、その感覚を思い出そうにもうっすらとしか思い出せない。
例えばTikTok等を見る度に思う「自分より上の人の遊びだ」とか、そういう防衛本能とか危険察知能力で学生の頃の感覚や気持ちを鮮明に思い出す事はあるけど、シンプルな時間や景色を見て思い出せる事が年々なくなっている気がして悲しくなる時がある。

学生じゃない今の自分が夏の終わりと聞いて思い出すのは2年前の事。
自主制作盤の発売と、そのアルバムのレコ発イベントの事だ。
一発で思い出すあたり、やっぱりとても嬉しかったし楽しかったんだと思う。

前の事務所と上手くいかなかったり、ライブハウスの人から無下に扱われたり、自信を奪われていくばかりの中で作ったアルバムだった。
この作品を以って、誰も自信を持たせてくれないなら、自分の中で作って抱いても良いんだと教わった。

この2年で3枚CDを作る事が出来た。
そしてあと何週間かすればレコーディングが始まる。
去年や今年に入って作ったストックの中から選んでも良かったんだけど、改めて全部一から作った楽曲たちを録る事にした。
作曲と編曲は3日前にほぼ完成して、歌詞を今書いている。

毎回やり切ったというか、今度こそ天井に張り手を喰らわしたくらいに思いながら作品を完成させるけど、その度に実は天井がまだまだ高かった事を思い知らされる。
悔しくも嬉しくなって、また曲が出来ていく。

「WITNESS」のマスタリングが終わってしばらくは曲が今後書けるのかが本当に怖かったし、実際何ヶ月か書けなかった。
それくらいには出し切ったと思っていたけど、次第に天井が高く見える感覚がまた現れて、曲を書けるようになった。
それが7月になる少し前の事で、今回録る楽曲は全てそれ以降に作ったものから選んだ。
天井に届こうと頑張るからか、今までで一番良いと思える楽曲が次々と揃ったからだ。
いつか聴いてもらった時に「成る程」と思ってもらえるはず。

歌詞がなかなか書けなかったり、色々あるけどやってくのでどこかで楽しみに待ってもらえたらとか、あわよくば聴いて何か思ってくれたらと思っている自分が今からもう既にいる。
自分がしたいって理由でやっている音楽なのに何かを求めてしまっている事に、やっぱり時折ため息が零れそうだけど、でも別にこれで良いのか。

嫌がられるのか喜ばれるのか、はたまた何もないのか分からないけど、とても好きだから理由をつけて接したくなる。
だから猫を抱きしめるし、聴いてくれる人に向けては音楽を届ける。
好きだから何かあげたい、それで良い気がする。
何ならそれだけで良い気がする。

2018.8.30.PM19:52

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