Ghost like girlfriend

TestifyColumn

2018.9.6.PM20:06

先日、知らない番号から電話がかかって来た。
出てみると以前所属していた事務所の人で、話すのはおよそ3年振りだった。
「その後頑張ってるみたいだね」と言われ、少し腹が立ちながらも「おかげさまで何とか」と答えた。

「煙と唾」という楽曲で名前まで出しているのに、何の気まずさも無い声で一方的に話してくる事。
感想やタイトルだったり、自分の楽曲に関する情報が一切出て来ない事。
今の俺の楽曲を聴いてないと分かる事が幾つか垣間見られた。
現状を聞かれたから答えると「そうなんだ」と暗い声でしか返って来ず、社交辞令であれ嘘であれ言えば良いのに「良かったね」とか労う言葉も出て来る様子もない。
5分ほどそういう話をして電話を切った。

リハーサルスタジオに居たからその後も歌の練習はしてみたものの、頭から離れない疑問や怒り悲しみで呼吸のテンポがズレて、ペースを乱されただけだった。

電話をかけてきたその人に、3年前の3月に4時間ほど説教されてミュージシャンとしてのプライドも一人の人間としてのプライドも全部へし折られて0になった。
そこから間もなくして本格的に始まった2015年は自分にとって苦しい一年だった。
自分は何にも逆らっちゃいけないし何も言ってはいけないという気持ちで過ごしてしまっていたから、何かの言いなりになったり都合良く使われる事が今までで一番多かった。

その位説教は響いていたし毎日思い出していたけど、反芻の渦中から少し抜け出し始めた半年後くらいの頃に、改めて怒られた事を一つ一つ見直すとどうも自分だけでなく相手も悪いんじゃないかという部分が見つかり始めた。

例えば初めてCDを作った時、周囲の反応は今ひとつながらもどうしても収録したい楽曲が一つあった。
選曲期間が半年あった中で半年言い続けて「そこまで言うなら」とOKが出て、実際に収録してもらって発売もした。
新たなMV公開やラジオや雑誌などへの出演、オンエア、掲載一切なしの全くのノンプロモーションかつ限られた店舗のみで発売した為、CDが突然爆発的に売れるという事はなかった。
発売から3ヶ月経って先述の説教があり、その中で「君のわがままを聞いてあの曲を入れたからCDが売れなかったし、実は反対だった」と全ての責任を押し付けて来た。
当時は本当に消耗しきっていたから自分が悪いんだと受け入れてしまったけど、明らかに自分だけではないなと思う部分がそんな風に見つかっていった。

そこから芽生えた久々の意思は「音楽を仕事にするのは諦めよう」という事と「最後のアルバムを作ろう」だった。
最後だと自分に言い聞かせると後悔を残さないようにと身体が鳴って、毎日スタジオや自宅で曲を書くようになった。
集中すればする程、当時一年ほど付き合っていた彼女とも折り合いが段々つかなくなっていって、年明けに別れを告げようとした決めたもののノロウイルスに感染してしまい、急いで伝えなきゃという気持ちも相まって、結局LINEで伝えるという最低な事をしてしまった。

数週間ほどして「荷物を取りに行きたい」という連絡があった。
候補で挙げられた日にちと時間が全て大学のテストやバイトと被っていて、結局俺がいない時間に取りに来てもらった。
夜遅くに帰ってテーブルを見ると「有難うございました」という手紙とチョコレートが置いてあって、酷い事をしてしまったなと申し訳ない気持ちになった。
しばらく色々考えていると、郵便受けの中に合鍵を入れておいてもらったのを思い出して、取りに行こうと立ち上がって一歩進むと何かを踏んだ。

足元を見るとライターだった。
自分もその子も煙草を吸った事は無かった。
考えられる事としては二つ、一つは一緒に荷物を取りに来た別の誰かの落し物、もしくは殺意とかそういう怨念を込めたメッセージとして置いていったか。

未だに何だったのか分からないけど、確かに最後の1~2ヶ月は理由をつけて休みがないと会うのを拒んだり、酷い事をしてしまっていた。
このタイミングのライターは火をつけると大きく燃えたり爆発してもおかしくはないけど、自分がしてきた事を思い返す度に火をつけなきゃいけない気がした。
恐る恐る親指をライターに沈めていくと、カチッと音が鳴って普通に火がついた。
普通のライターだったと安心したものの、捨てるに捨てられず、どうしようか考えた。

年を越したタイミング、彼女がいなくなった、最後のアルバム制作。
何かが変わる気がしたし、何かを変えなきゃいけない気がした。
翌日、お香を買いに行った。

それ以来、たまにお香を焚くようになって、その際にはいつもそのライターを使っていたけど、この間とうとう火がつかなくなった。
2年以上使っていたのかと思いながら、色々変わった事があったなと物思いにふけた。
彼女を遠ざけてしまった理由に、よく怒られていたからというのがある。
ご飯を食べている時に疲れた顔をしていると、後々「疲れてそうだったから話すのを遠慮してしまった」と言われたり。
当時は話してくれれば聞くし疲れてるんだから許してくれと思っていたけど、至極真っ当だと後で気付いたし自分が悪かったなと気付いて、表に出すのを気を付けるようになった。

変わった事もあれば変わってない事もある。
手をひいて導いてくれる人もいれば、引きずり下ろしてくる人も居る。
自分は誰かにとってどっちなんだろうと考える。
分からないけど、今自分の周りには好きな人しか居ないから、その人たちを引きずり下ろすような真似はしたくない。

何かといつも何かの渦中に居て、知らず識らず余計な事を言ってしまったり迷惑をかけたりしてしまうけど、それでも自分なりに相手に寄り添える人でありたい。
礼儀や気遣いは用いても、嘘をつかない人でありたい。

2018.9.6.PM21:57

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