Ghost like girlfriend

TestifyColumn

2018.10.17.PM23:45

二週間前に、実家で暮らしていた猫が一匹亡くなった。
真夜中に連絡があって、友人の家でその報せを受けたのもあって最初は実感がなかったものの、自転車で帰っている時に「もういないのか」とぼんやり頭で繰り返し始めた。

夏にここでも書いたプリンという名前の猫。
俺が虫歯になったのと時を同じくして歯槽膿漏になって、食べられなくなって丸々と太っていた身体がみるみる痩せ細っているというのは母より前々から聞いていた。
その上で夏に帰省するともうすっかり歯が治ったらしく、ご飯も食べていたし「ああ大丈夫なんだな」と安心して東京に戻ってきた。

老衰である。
思えば9歳の頃から一緒に暮らし始めて、今年15歳。
猫にしては長生きな方だし、病気だったり残りの時間を露骨に考えさせられるようなきっかけが無くとも、突然去ってく可能性をはらんだ年齢に気付けばなっていた。
だから油断してしまっていた事に悔しくなった。

そもそも年齢とかそんなものに関わらず、どんな段階であれどんな状態であれ突然消えゆく可能性を誰しもが持ってて。
只、「病気でこれから弱っていきます」とか「年齢的にどんどんあなたの事を忘れてゆきます」とか、そういう事を言われないと身構える事をしないし、元気でいてくれていると当然のように明日明後日明々後日、来年再来年、10年後も会えるもんだと思ってしまう。

そういう当たり前の曖昧さや、「悔いの無いように生きていかなきゃな」とかそういう大きな気持ちをくれるのは良いんだけど、困った事に肝心の、亡くなったという実感が未だ掴めずにいる。

4年前の丁度今くらいの時期に、バニラという猫が先立っている。
そのバニラはガンを患って、ある程度の余命も宣告されていた。
それを知って身構えた俺は帰省や、関西でのライブの前後で帰ったりして度々会いに行っていた。
痩せ細っていく身体や、命が尽きていないのに臓器の一部が停止した事で出てきた腐敗臭や、確実に死に向かっている様を毎日ではないながらも途切れ途切れに側で見て覚悟していた。
だけど母の報せで亡くなった事を知ったから、結局その様を見ていない事から未だに亡くなったと思えていない。

もらった遺骨が家にあるけど結局それはお守りや思い出の品のような感覚で、それを撫でたり実家の匂いが染み付いた何かで包んでやったりしても、まだどこかで生きているような感覚が拭えない。
あれから何度か、いや何度も実家に帰っているけど、その度たまたま会えなかったんだなと飄々と東京に戻るのを繰り返している。
受け入れたくないから逃げているとかそういう事でもなくて、只々本当に分からない。
だから落ち込む事はあっても、泣けた事がまだない。
こないだ亡くなったプリンの事だってそうだ。
死んだとは思っていない。
只、これから長い間会えないのは分かっている。
今はそれが凄く悲しい。

来月の始めにとある事の為に地元へ帰る。
ようやく音楽を通して、仕事を通して帰れるのに会えないんだもんなと。
いつも願いが完璧に叶わないというか、本当に紙一重で何かが間に合わない。
やっと指先が触れて、あと少しで掴む事が出来るというところで閉ざされるのはこれで何回目なのか。
もう少し早ければなと思う事が今もかさむばかりだ。

それを無くせるようにと、悲しみに沈む事がないようにと言わんばかりに毎日が少しずつ音楽の予定で埋もれていっている。
自分がずっと欲しかった暮らしが、いつの間にか何気無く叶っている事をスケジュール帳を見て知った。
ずっとこれが続けばいいのにと思う。

猫が亡くなった事で突如掲げられた「後悔なく生きたい」というテーマ。
それに沿って生きる時、何をしたいのかを自然に考え始めて、自然に答えが浮かんだ。
夢を叶えたい。
音楽をやっていく中で、知っていく中で細かなものから大きなものまで夢が出来たし、それらを一つ一つ叶えていきたいなとスッと考えた。

個人的に、シンプルに命が無くなる事は勿論、何かに心底から絶望したりどうでもよくなる事で死んだように生きる事も「死ぬ」のうちに入る。
そういう意味では、期待をするとか、夢を見るというのはきっと死ぬリスクの高いもので。
そんな中でまだ希望を沢山持って暮らせている事がとても幸せに思えたし、全うしたいんだなと気付けた。
何気無く視線を上げてくれた猫たちに感謝したい。
いつかまた会えた時は撫で倒そう。

日付変わって今日はリハで、金曜は前にもここで書いた久々のあれを。
結局例の曲から始めるのは諦めたけど、いつかやれたら良いな。
どんな感じだったっけと思い出してみるけれど、どれも何か違う気がする。
だからまるで新しい事を始めるみたいな気持ちになっている。
どう転んでも楽しめれば良いな。

2018.10.17.PM25:07

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