Ghost like girlfriend

TestifyColumn

2018/6/20 PM27:03

本日(正確にはもう日付を跨いでいるので昨日)、新曲「髪の花」の先行配信及びMVの公開があった。

我ながらとても大きな楽曲になったと思う。
レコーディングをする1年前に、友人のエンジニアに手伝ってもらって丁寧に原型となるデモを作ったのだが、その時のデモを聴いても「大きいな」と感じる。
自分からこんなサイズ感の音楽が出来たのは生まれて初めてだったので、ちゃんと歌えたり、ものに出來るか心配になる事も度々あった。
あったけれど、今ではしっかり自分の楽曲だと誰もに言い切れる。

大きいけれど、歌っている事はいつもと変わらず、良くも悪くも自分につきまとう傍の気持ちや感覚を歌っている。
前回ここで書いた「sands」での話の続きが、この「髪の花」の何割かを形成しているので、今からそれについて話そうと思う。
これも同じく、これから話す事は今後楽曲を聴いてもらう上で念頭に置いてもらっても良いし、蚊帳の外にしてもらっても構わない。

前回ここで書いたクラスメイト。
彼女は高校一年の終わり頃に学校を辞めたものの、そこから半年以上経ってから再会を果たしたり、たまに連絡を取ったりしていた。
高校を卒業するまでに2~3回会って、卒業してからは連絡も取らなくなった。

それから2年経って、20歳になる少し前に彼女から久々の電話がきた。
家に少しの間泊めてくれ、との事だった。
東京へ行って働きたいが一人暮らし用の軍資金が整っておらず、それが貯まるまでの間という条件と、お金が必要な理由を聞いて了承した。

20歳になって少しして、始発の電車で新宿駅へ向かい、夜行バスの到着を待った。
早朝と言えども日本の真ん中、人はそれなりに溢れている。
待ち合わせ場所の改札前から、四方八方を見渡して、それらしき人物を目で探した。
探したものの見つからず、電話をかけて見た目の特徴を聞いた。
「銀髪」というワードが放たれた瞬間に、人混みの中から一瞬で見つけた。

鬼ギャルである。
最後に会った2年前とはまるで違う。
びっくりしたものの、声や顔立ちに面影が確かにあって一先ず安心した。
電車に乗って自宅に着き、その日はこの2年何があったとか、そういう話をお互いにした。

数日後、道玄坂を案内してと言われたので、道玄坂へ。
案内というか、自宅から一緒に渋谷まで電車で行った後は向こうがグーグルマップを見ながら歩いてくので、後ろをついていくだけ。
到着した雑居ビルの前で「待ってて」と言われて、待っていた。
待っている間、ビルの中ではキャバクラの面接が行われていた。
後日採用となり、そのまた数日後から勤務が始まり、キャバ嬢との同居生活が始まった。
真夏の事である。

同居が始まる数ヶ月前に、初めて自分のCDを作る事が決定した。
したのは良いものの、なかなか収録曲が決まらない。
あまりに決まらない、というか書けなさすぎる事から、当時所属していた事務所のミーティングルームに毎週末通っては朝まで曲作りをしていた。
彼女からの久々の電話があった頃にはそんな暮らしを始めてから一ヶ月は経っており、彼女がこっちで働きだす頃にもそれはまだまだ続いていた。

週末に書けた楽曲の断片を数日かけて膨らませて、毎週木曜の定例会議に皆で聴いては空気を沈めるばかりで。
それが何週間も続いた。
正解が分からなかったし、とても疲弊していた。

週末の自分たちの生活リズムは2~3時間ほどズレていた。
朝に帰ってきて眠っているといつも、SEKAI NO OWARIの「RPG」が爆音で聞こえてくる。
彼女の携帯のアラームの音だ。
それにつられて目が覚めても、眠過ぎてなかなか目が開けられなくて、目を開ける頃には彼女は身支度を済ませて玄関へ向かおうとしている。
そんな時、定点カメラのように動かない自分の視界に映るのは彼女のかかとだった。

未だ曲は書けず、収穫もなしに家に帰って行く。
起こさないように、でも帰って来た事に気づいて欲しくて、結局鍵を普通に開ける。
心の疲れと身の疲れを抱えながらシャワーを浴びると、視界が二重三重にぼやける。
鏡の水垢やシャワーの水しぶきは煌めいて見えるし、排水溝にある髪の渦は時に花に見えた。
砂嵐の中に何かを見出すように、ぐらついた視界の中から何かを見出していた。

そういう日々がほとんどの中、たまにどこかでご飯を食べたり、出かけたりしながら同居は続いた。
そうして一ヶ月半経った頃、互いに眠る前に話があるというので聞くと、明日引っ越すと言われた。
確かに、少しずつ六畳一間が彼女を迎える前の姿に戻ってはいたが、あまりにも突然だったので冗談だと半ば思っていた。
しかし翌日、朝から突貫で引越しの準備が始まって、休む間もほとんどないまま夕方には本当に引っ越していった。

それから少しして曲が無事に出来てCDが完成したり、地元の成人式で再会したり、少しして音楽を続けるか迷ったり、少しして東京で再会したり、少しして音楽を続ける事を選んで、会う事もなくひたすら曲を書いた。

2017年1月、友人づてに彼女が結婚したと聞いた。
多分人生で一番「マジか」と言った一日だったと思う。
さすがに驚いたものの、良かったと思えた。

当時、ドラマ「カルテット」を観ていた。
その日の放送は主人公が親しい同僚の女性に告白し、一晩だけ結ばれるものの婚約者と結婚間近である事から断られてしまうという内容だった。
しかし元々はその同僚が主人公に気付かれないながらも長年好意を抱いていて、もしどこかで彼がそれに気づいていれば、彼女は婚活で結婚相手を探さなかっただろうし、2人が離れ離れになる事もなかったかもしれないのだ。

観ていてどことなく苦しくなった。
自分がかつて置かれていた状況とは似ているようで全く違うけれど、こんな展開だってあり得たのかなと考えた。
しばらくこのドラマと、彼女の事を考えていた。
別に付き合っていたわけでもなければ本当に何もなく、淡々と過ごしていた。

でももしドラマと同じような展開が、色んなタイミングが合致して起こったならきっと、見透かされたい嘘をたくさんつくだろうと思った。
相手にもう誰かが居ようが、気持ちが通じていると分かっていたら関係なく一緒に過ごせる方法を探す。
それが誰かを傷つけるものであっても構わないとすら考えて探し続ける。
でも結局はそれら全て自ら水の泡にして、偽り丸出しの思いやりを言葉なり行動なりにして差し出す。
本当の考えを見透かしてくれとか、わがままでぬるい事をぬかしながら。

ドラマの放送日を調べると、2017年1月24日となっている。
この楽曲が浮かんだのはその3日後、1月27日である。
少なくとも3日間はずっと、そのもしもの事を考えていた。
身勝手な妄想の中ですら勇気のない自分に情けなさを覚えながら。
その末に最寄りのコンビニへ向かう途中、気付けば鼻唄でサビのメロディを歌っていた。
それらを膨らませて、「髪の花」は出来ていった。

事実ともしもが「髪の花」には入り混じっている。
その両方が自分にとって大きなものである。
大きなものだったり、貴重なものだった事を物理や時間的な距離を置いて、ようやっく芯から実感出来た。
だからそれらを楽曲にすれば、大きなものや貴重なものになると思った。

自分にしか分からない楽曲になるかもしれないと思いながらも、自分にしか書けないものを書けるならと進めていったら完成した。

なるべく飾らないように書いた故に、人によっては最低とか思われても仕方がないのかもしれない。
でもきっと、分かる人にはとても分かる事を歌えたと今は思えている。
この楽曲を聴いて何を思うのか、何かしらで知れたら嬉しい。
よかったら教えて欲しい。

あとサビ頭の「ウォーオオオーオー」の部分。
レコーディング当時は慣れ親しんでいたバラエティ番組の終了や、友人との別れがあってとても寂しかった。
そういうどうしようもなさや、また新しい幸せを見つけてやるって気持ちを吐くように叫んだ。
色んな気持ちを喉を痛めてでもぶつけてるので、何か溢れて仕方なくなりそうなその時は、この楽曲にぶつける事を勧める。
楽曲の中の僕も一緒になって叫んでぶつけるので。

2018/6/21 AM06:33

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